「羊をめぐる冒険」の翻訳(109)
第七章 いかるホテルの冒険1 映画館で移動が完成される。いかるホテルへ(1)
飛行機に乗っているあいだ、彼女は窓際に座ってずっと眼下の風景を眺めていた。僕はその隣りでずっと「シャーロック?ホームズの事件薄」を読んでいた。どこまで行っても空には雲ひとつなく、地上には始終飛行機の影が映っていた。正確に言えば我々は飛行機に乗っているのだから、その山野を移ろう飛行機の影の中には我々の影も含まれているはずだった。だとすれば、我々もまた地上に焼きつけられているのだ。
「私はあの人好きよ」と彼女は紙コップのオレンジ?ジュースを飲みながら言った。
「あの人?」
「運転手よ」
「うん」と僕は言った。「僕も好きだよ」
「それにいわしっていい名前だわ」
「そうだね。たしかにいい名前だ。猫も僕に飼われているより、あそこにいた方が幸福かもしれないな」
「猫じゃなくていわしよ」
「そうだ。いわしだ」
「どうしてずっと猫に名前をつけてあげなかったの?」
「どうしてかな?」と僕は言った。そして羊の紋章入りのライターで煙草に火をつけた。「きっと名前というものが好きじゃないんだろうね。僕は僕で、君は君で、我々は我々で、彼らは彼らで、それでいいんじゃないかって気がするんだ」
「ふうん」と彼女は言った。「でも、我々ってことばは好きよ。なんだか氷河時代みたいな雰囲気がしない?」
「氷河時代?」
「たとえば、我々は南に移るべし、とか、我々はマンモスを獲るべし、とかね」
「なるほど」と僕は言った。
千歳空港で荷物を受け取って外に出ると空気は予想していたより冷やかだった。僕は首に巻いていたダンガリのシャツをTシャツの上に着こみ、彼女はシャツの上から毛系のベストを着た。東京よりちょうど一ヵ月ぶん早く秋が地上に腰を据えていた。
「我々は氷河時代に巡り会うべきじゃなかったかしら」と札幌に向うバスの中で彼女は言った。「あなたがマンモスを獲り、私が子供を育てる」
「素敵みたいだな」と僕は言った。
それから彼女は眠り、僕はバスの窓から道路の両側に延々とつづく深い森を眺めていた。
在乘飞机期间,她坐在窗口旁边一直向下看着下面的风景。我坐在她的旁边一直看着《夏洛克事件》。无论飞行到什么地方天空中一丝云也没有,地面上却始终有飞机的投影。正确地说因为我们乘坐在飞机上,在飞越山野的飞机投影中也包含着我们的影子。若是这样的话我们也在大地上留有记号。
“我很喜欢那个人。”她一边喝着纸杯中的饮料一边说。
“哪个人?”
“那位司机。”
“是的。”我说。“我也喜欢。”
“而且沙丁鱼是个很不错的名字。”
“是的。的确是个好名字。和被我养着相比,猫在那里会更幸福的。”
“不叫猫了,是叫沙丁鱼。”
“是的。是沙丁鱼。”
“为什么一直没有给猫起名字呢?”
“这是为什么呢?”我说。然后用刻有羊图案的打火机把烟点着。“肯定是不喜欢名字吧。我是我,你是你,我们是我们,他们是他们。不就是这个意思吧。”
“嗯。”她说。“很喜欢‘我们’这个词。什么是像冰河时代那样的气氛?”
“冰河时代?”
“比如,我们向南移,然后我们肯定能获得猛犸。”
“当然了。”我说。
到千岁机场取到行李后走出去,那里的空气比预想的还冷。我把围在勃子上的厚棉衬衣外套在T恤衫上,她在衬衫外套上了毛背心。和东京相比这里大约提前一个月稳稳当当入秋了。
“我们肯定会在冰河时代邂逅的。”在去往札榥大巴车上她说。“你获得了猛犸,我养着孩子。”
“这真是太美好了。”我说。
然后她睡了,我则透过大巴的窗户看着道路两侧连绵的森林。
主人公和他的女朋友乘飞机来到札幌,到那里的草原冒险寻找特殊的羊。
他们的行程顺利吗?能找到那种羊吗?
从今天开始,进入小说的下册。
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